今朝、「ガレが一つあるので、A先生が今度のお茶会で使いたいからと日曜日に借りに来ました。八百竹さんからのものでなく、祖母の代からあったものなので、ガレ、ガレと云ってもよく分からないので、時間のある時で結構ですが、ガレについて調べてくれませんか?」と純子さんから声をかけられました。「ガラス器のガレですか?」「水差しかと思うのですが、A先生は、花器に使うそうです」と云うことで、詳細はエミール・ガレ(Wikipedia)をご参照いただくとして、ガラス作品にまつわる雑感を記し、杉浦家のガレ作品公開も検討していきたいと思います。
県内では、清里にある「北沢美術館」が、ガラス美術館として、充実したコレクションを誇っていますが、昨年の暮れから今年の3月まで、「咲き誇るアール・ヌーヴォーの名品 ガレ、ドームの3大傑作展」を開催していました。また、幻の技法「ピクウェ」を現代に再現し、近年パート・ド・ヴェールの宝飾品も手掛ける塩島敏彦氏は、昭和町押越在住の象嵌とガラスの技法を駆使する宝飾作家です。その塩島氏が、3、4年前「アール・ヌーヴォーの作家たちが、当時は消滅していたパート・ド・ヴェールの技法を再現して、ガラスをただの工芸品から美術品の領域にまで引き上げたけど、技術的限界から花瓶など大きなモノまでだった。それを、俺の象嵌技術を応用して宝飾品という小さな世界にパート・ド・ヴェールを再現し、アール・ヌーヴォーの植物をはじめとする自然をモチーフにしたジャポニズム要素のある叙情豊かな型と文様を引き継いだのが、この新作だ」と熱く語って、「このシリーズのブランド名の考案と商品説明を書いてくれ」と依頼されたのを思い出しました。ブランド名を「プチ・モンド(小さな世界)」として、塩島氏を「どっこいしょ」しつつガラス作品の歴史を追いながら書いた文章が比較的まとまっているので、「アンリ・クロ」や「エミール・ガレ」といったフランスのアール・ヌーヴォー作家たちの紹介の一助にと余録としてお付けします。特に、ガレは「ナンシー生まれの日本人」とまで評論された程、花鳥風月を造形に取り入れ人気となり、当時、花瓶は1点400フラン前後の値段(中産階級の一家の1ヶ月の生活費に相当)がつけられた高価な商品でした。ガレのショールームは故郷ナンシーの他、パリ、ロンドン、フランクフルトに設置されるなどアール・ヌーヴォーの代表的作家として、現在もアンティーク市場では、取引が活発な人気作家です。そのガレのサインが刻まれた花器が、遠い昭和町で、杉浦家のコレクションとして代々引き継がれて現存し、日本の茶会などで活用されていることは、作者ガレにとってもこの上なくうれしく名誉なことでしょう。
「プチ・モンド(小さな世界)」について