2016年12月28日水曜日

杉浦醫院四方山話―489『地方病終息20年の年』

 今年は、山梨県で地方病の流行終息宣言が出されて20年という節目の年でした。その為か、2月の県生涯学習センターでの「終息史」の講演に始まって、12月の山日新聞「時標」での論説記事まで、対外的な対応も多かった一年でした。

 

 その中で、お年寄りにデイサービスを提供している施設からも「1時間位、地方病の話をして欲しい」と云う依頼がありました。来館いただいて見学しながら話すのが一番なのですが、「バリアフリー」の言葉も無かった昭和4年建築の病院棟は、段差も多く、車椅子の方々には厳しい実態もあり、当館のDVDを持参して伺いました。

 ホールに集まったと云うより集められた先輩方の前に立つと何だか私の為にボランティア動員されているような感に襲われ、思わず「昼食後のお昼寝に最適な時間にお集まりいただき、ありがとうございます。お疲れの方はどうぞ寝ながらで構いませんから・・・」と自分でも予期せぬ言葉が飛び出し驚きましたが、正直なところでした。

 しかし、話し始めると「わたしゃ、注射15本も打っただよ」とか「俺は30本打った」「うちは月給取りで、百姓じゃなかったから地方病にはならなかった」「地方病になったけど92まで生きてきた」等々不規則発言がどんどん出て、「そうそう、体が大きくしっかりしたお父さんは30本、スタイルがよっかったお母さんは15本と、違ったようですね」と、皆さんの実体験に合わせて話を進めるとアッと云う間の1時間でした。

 職員の方からも「こんなに皆さんが集中して聴くのは初めてでした」と云われましたが、確かに自分や家族の体験談を皆さんが話すということは、話者になる訳で、ただ聴くだけの受け身の状態から一緒に時間を作っていくことになりますから、皆さんにとっても短い1時間だったかと思いました。山梨県内の高齢者施設には、元患者さんも多いことでしょうから、逆にこちらが体験談を聴くことで教えられることがありますので、当館まで足を運べない方々への出前見学会の必要性も学びました。

 

 どなたかが「全国放送のテレビは視聴率1パーセントでも100万人が見ていることになる」と教えてくれましたが、10月にフジテレビの「世界何だこれ!ミステリー」で地方病を取り上げ、当館も取材を受け全国放映されました。翌日から「テレビを見てきました」と云う方々が新潟から京都から横浜から・・・と来館し、テレビの威力をあらためて認識させられた年でもありました。

 

 

文字どおり、申年が去りますが、今年一年当館に寄せられましたご厚情に感謝申し上げ、来る酉年が益々よい一年となりますようご祈念申し上げ、年末のご挨拶といたします。