2018年12月19日水曜日
2018年12月5日水曜日
杉浦醫院四方山話―564『NHK・BS1で全国放映』
今夏、NHK甲府放送局が制作したローカル番組「ヤマナシクエスト」が、BS1で全国放映されることが決まったそうです。
この全国放映は、全国各地のNHK支局が製作したローカル番組の中から、セレクトされたものが放送されると云う事ですから、山梨の地方病終息の歴史をフィリピン人留学生医師と獨協医科大学の寄生虫研究室の皆さんがたどったこの番組は、NHKが山梨県民にだけではなく多く日本人に観て欲しいということでしょう。
この番組で、私が特に印象に残ったのはフィリピン人留学生医師イアンさんが、山梨県内で官民挙げてミヤイリガイ殺貝活動に取り組んだ歴史や実態を知って「フィリピンでは国民がこの病気を受け入れてしまっているから、日本のような取り組みはない」と云う率直な感想でした。
日本住血吸虫症の患者には、日本では「スティブナール」が特効薬として使われてきましたが、現代では、ドイツの製薬会社バイエルが1970年代に開発した「プラジカンテル」が使われています。
山梨でも新たな発症者が激減し終息も近いと云われた時期に開発された「プラジカンテル」は、WHO(世界保健機構)によって医薬品の入手が困難な開発途上国の最小限必要な医薬品の1つに採用されました。
その結果、中国からフィリピンにかけての東南アジア諸国では、日本で行ったような日本住血吸虫症に罹らない為の予防、啓発活動やこれを根本的に終息させる取り組みは進まず、罹った人は、一本750円前後の「プラジカンテル」を注射して対応することが国民に浸透して、現在に至っているようです。
イアンさんの「フィリピンでは国民がこの病気を受け入れてしまっているから・・・」の言葉は、プラジカンテルで対応すれば事足りると云う現状を憂いての感想なのでしょう。
当館が伝承していこうとする日本の山梨の地方病終息の歴史は、例えば、黄熱病=野口英世博士と云った個人の業績では語れない、多くの農民であったり、医師であったり、役人であったり、住民であったりの総合された協働の成果に拠る所にあります。
であるからこそ、多くの物語を内包しているのが、地方病終息の歴史でもあります。ある意味ドラマチックな展開が日本の近代史と共に進む終息史は、個人的にはNHKが大河ドラマに仕立てるに十分な素材だとも思っています。
全国放映が決まった「ヤマナシクエスト」には、そんな当館の思いも入っていますから、多くの皆様に観ていただきたく案内させていただきました。
NHK BS1 2018/12/13(木) 18:27~
ヤマナシ・クエスト
「地方病を撲滅せよ〜山梨県民 不屈の100年戦争〜」
出演 伊東敏恵
「日曜美術館」の伊東敏恵アナウンサーのナレーションは、程よい低さで静かな語りと相まって絶妙です。
2018年12月3日月曜日
杉浦醫院四方山話―563『2018杉浦醫院庭園の紅葉』
寒さを体感するようになるとテレビや新聞などでは「気温も下がり、木々も一斉に色づくこの季節、風流に紅葉狩りを楽しみたいですね」と云ったアナウンスや記事が溢れ、名所や付随するイベントが紹介されたりと四季の有る日本では、自然の移ろいでニュースや番組まで作れることを実感させられます。
山梨では、「紅葉狩り」の前は「ブドウ狩り」や「キノコ狩り」も楽しめますが、同じ「狩り」でも「紅葉狩り」は趣がちょと違います。
それは、狩猟をしない貴族が、紅葉を見ながら宴を開き、和歌を詠んで勝負する「紅葉合」が平安時代に流行したことから、彩られた山々や木々を観賞する「紅葉狩り」が時代と共に庶民の間にも定着していったそうですから、「狩る」は「きれいな紅葉を探し求める」という意味なのでしょう。まあ、そう考えると美味しい葡萄や安全なキノコを探し求める「ブドウ狩り」や「キノコ狩り」も同じですね。
この紅葉は、一般的には「気温が急激に下がることで、光合成によってできる葉の中のタンパク質が枝へと移動できなくなり、糖類が蓄積されて、緑の色素である葉緑素が壊れていくために起こる現象」と云われています。しかし生物学者の福岡伸一教授は、「赤の色素や黄色の色素云々という仕組みを説明するのがせいぜい」で「あんなに青々と茂っていた葉がなぜかくも美しい赤や黄に変わるのか、その理由は生物学者にもわからない」とし「紅葉が美しいと感じるのは人の心の作用なのだと悟った」と朝日新聞のコラムで結論付けていました。
確かに、癌と診断され『来年の紅葉は見られません』などと宣告されれば、これまでさほど興味もなかった桜や紅葉など身の回りの全てのものが全く違って見え出したと云うエピソードはよく聞きますから、ミモフタモナイ福岡教授の結論「紅葉が美しいと感じるのは人の心の作用なのだ」が真理かも知れません。
同時に、日本住血吸虫の虫卵から孵化したミラシジウムが、同じ巻貝のカワニナには寄生しないで、なぜミヤイリガイだけに寄生するのか?なのに、なぜホタルの幼虫は、ミヤイリガイもカワニナも餌にして食べるのか?現在も解明されていませんから、自然界の事は分からないことの方が多いのも確かなのでしょう。
何はともあれ、日本の気候風土が織りなす世界一美しいと云う日本の紅葉を素直に愉しめる人でありたいと今年も杉浦醫院庭園の紅葉をカメラに納めてみました。
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