2018年12月5日水曜日

杉浦醫院四方山話―564『NHK・BS1で全国放映』

 今夏、NHK甲府放送局が制作したローカル番組「ヤマナシクエスト」が、BS1で全国放映されることが決まったそうです。

この全国放映は、全国各地のNHK支局が製作したローカル番組の中から、セレクトされたものが放送されると云う事ですから、山梨の地方病終息の歴史をフィリピン人留学生医師と獨協医科大学の寄生虫研究室の皆さんがたどったこの番組は、NHKが山梨県民にだけではなく多く日本人に観て欲しいということでしょう。


  この番組で、私が特に印象に残ったのはフィリピン人留学生医師イアンさんが、山梨県内で官民挙げてミヤイリガイ殺貝活動に取り組んだ歴史や実態を知って「フィリピンでは国民がこの病気を受け入れてしまっているから、日本のような取り組みはない」と云う率直な感想でした。

 

 日本住血吸虫症の患者には、日本では「スティブナール」が特効薬として使われてきましたが、現代では、ドイツの製薬会社バイエルが1970年代に開発した「プラジカンテル」が使われています。

山梨でも新たな発症者が激減し終息も近いと云われた時期に開発された「プラジカンテル」は、WHO(世界保健機構)によって医薬品の入手が困難な開発途上国の最小限必要な医薬品の1つに採用されました。

 

 その結果、中国からフィリピンにかけての東南アジア諸国では、日本で行ったような日本住血吸虫症に罹らない為の予防、啓発活動やこれを根本的に終息させる取り組みは進まず、罹った人は、一本750円前後の「プラジカンテル」を注射して対応することが国民に浸透して、現在に至っているようです。

 

 イアンさんの「フィリピンでは国民がこの病気を受け入れてしまっているから・・・」の言葉は、プラジカンテルで対応すれば事足りると云う現状を憂いての感想なのでしょう。


 当館が伝承していこうとする日本の山梨の地方病終息の歴史は、例えば、黄熱病=野口英世博士と云った個人の業績では語れない、多くの農民であったり、医師であったり、役人であったり、住民であったりの総合された協働の成果に拠る所にあります。

であるからこそ、多くの物語を内包しているのが、地方病終息の歴史でもあります。ある意味ドラマチックな展開が日本の近代史と共に進む終息史は、個人的にはNHKが大河ドラマに仕立てるに十分な素材だとも思っています。

 

 全国放映が決まった「ヤマナシクエスト」には、そんな当館の思いも入っていますから、多くの皆様に観ていただきたく案内させていただきました。


NHK BS1  2018/12/13(木)  18:27~

ヤマナシ・クエスト

「地方病を撲滅せよ〜山梨県民 不屈の100年戦争〜」 

出演 伊東敏恵

「日曜美術館」の伊東敏恵アナウンサーのナレーションは、程よい低さで静かな語りと相まって絶妙です。