2018年12月3日月曜日

杉浦醫院四方山話―563『2018杉浦醫院庭園の紅葉』

 寒さを体感するようになるとテレビや新聞などでは「気温も下がり、木々も一斉に色づくこの季節、風流に紅葉狩りを楽しみたいですね」と云ったアナウンスや記事が溢れ、名所や付随するイベントが紹介されたりと四季の有る日本では、自然の移ろいでニュースや番組まで作れることを実感させられます。

 

 山梨では、「紅葉狩り」の前は「ブドウ狩り」や「キノコ狩り」も楽しめますが、同じ「狩り」でも「紅葉狩り」は趣がちょと違います。

それは、狩猟をしない貴族が、紅葉を見ながら宴を開き、和歌を詠んで勝負する「紅葉合」が平安時代に流行したことから、彩られた山々や木々を観賞する「紅葉狩り」が時代と共に庶民の間にも定着していったそうですから、「狩る」は「きれいな紅葉を探し求める」という意味なのでしょう。まあ、そう考えると美味しい葡萄や安全なキノコを探し求める「ブドウ狩り」や「キノコ狩り」も同じですね。


 この紅葉は、一般的には「気温が急激に下がることで、光合成によってできる葉の中のタンパク質が枝へと移動できなくなり、糖類が蓄積されて、緑の色素である葉緑素が壊れていくために起こる現象」と云われています。しかし生物学者の福岡伸一教授は、「赤の色素や黄色の色素云々という仕組みを説明するのがせいぜい」で「あんなに青々と茂っていた葉がなぜかくも美しい赤や黄に変わるのか、その理由は生物学者にもわからない」とし「紅葉が美しいと感じるのは人の心の作用なのだと悟った」と朝日新聞のコラムで結論付けていました。


 確かに、癌と診断され『来年の紅葉は見られません』などと宣告されれば、これまでさほど興味もなかった桜や紅葉など身の回りの全てのものが全く違って見え出したと云うエピソードはよく聞きますから、ミモフタモナイ福岡教授の結論「紅葉が美しいと感じるのは人の心の作用なのだ」が真理かも知れません。


 同時に、日本住血吸虫の虫卵から孵化したミラシジウムが、同じ巻貝のカワニナには寄生しないで、なぜミヤイリガイだけに寄生するのか?なのに、なぜホタルの幼虫は、ミヤイリガイもカワニナも餌にして食べるのか?現在も解明されていませんから、自然界の事は分からないことの方が多いのも確かなのでしょう。


 何はともあれ、日本の気候風土が織りなす世界一美しいと云う日本の紅葉を素直に愉しめる人でありたいと今年も杉浦醫院庭園の紅葉をカメラに納めてみました。