2011年6月15日水曜日

杉浦醫院四方山話―54 『詩人・中川和江』

 「サンニチ」と云えば「山梨日日新聞」の代名詞として、県内では定着している唯一の日刊紙です。山梨県での購読率約70%を「サンニチ」1紙が独占していることを考えると県民の価値観、民度、世論形成等に大きく影響することから、その報道内容や紙面には人それぞれに不満や評価もあり、その辺の議論を耳にすることも多くなるのは当然でしょう。個人的には、「山日文芸」を始め小説・童話・詩・俳句・短歌・川柳等々の全文芸ジャンルに門戸を開いて公募し、しかるべき選者の「評」による作品掲載は、「田も作り、詩も創ろう」の文化活動を支える発表機会としても貴重だと愛読してきました。その点、児童、生徒の作文コンクール的な作品掲載は、最後に指導者の名前まであり、何か不純なものも感じ素直に読む気になれません。公器でもある新聞が、学校教育の一教科の一分野をなぜこういう扱いで取り上げているのか?歴史的経過も含めその意図を公にして欲しいものです。
 さて、この文芸欄「詩」のコーナー「山日詩壇」には、「昭和町・中川和江」作品が定期的に掲載されてきました。僭越ですが、時として「これが詩か?」と云うレベルの作品もある中、中川作品は毎回高い完成度と内容が際立っていました。同僚はじめ「この人ならば」と元婦人会会長Oさんにも「詩人・中川和江」を尋ねてきましたが、特定できずに10年近い年月が過ぎました。
 「サンニチ」5月23日(月)の「戦地の恋人からの手紙語る 平和ミュージアム講演会 91歳中川さん 詩で平和訴え」に続き、6月14日(火)の「顔」欄に探していたその人が写真入りで紹介されました。詳細は、「サンニチ」をご覧いただくとして、昨年12月に第2詩集「夕焼け」が出版されていることも知り、その自著プロフィールをご紹介します。
 中川 和江 本名・伊藤春江。1920年昭和町上河東に生まれる。昭和40年頃より俳句をはじめる(故加賀美子麓先生師事)。平成15年頃より短歌をはじめる(故上野久雄先生師事)。平成15年頃より山日詩壇に投稿をはじめる。
山日文芸短歌欄の河野小百合選の常連として、俳句欄では井上康明選で「昭和町・伊藤春江」名の作品を拝読してきた私の記憶でも伊藤春江さんと中川和江さんの作品は共通します。石垣りん作品を彷彿させる「生活詩」と茨木のり子と重なる感受性豊かな「叙情詩」の中川和江さんが、両氏とほぼ同世代の91歳であること、両氏亡き後の今日も健筆で、作品を通しての社会発言も・・・柳沢八十一氏に連なる「文芸・昭和」の隠れ実力マドンナ!満を持しての登場といった梅雨の涼風です。