2011年9月24日土曜日

杉浦醫院四方山話―79 『ケビント』

 先日、甲府の「マルヤマ器械店」の丸山太一氏から、「医療棚」三台と「医療機器類」を杉浦醫院にご寄贈いただきました。
写真の医療棚は、杉浦医院の診察にあるものですが、医療カタログでは「器械棚」と命名されているそうです。近年、歴史を刻んだ古い器械棚がアンティーク家具として人気で、ネットオークションなどの相場では、安い物でも数万円、質の良い物だと十数万円もするそうです。
 この棚のファンには、女性が多いことも特徴で、旅行に行った際に購入した置物を並べたりするコレクションケースに使ったり、お気に入りの香水や化粧品を並べたり、食器棚として愛用したりと、個性的に使うのがオシャレだとか。
帰り際、丸山太一氏から「私たちは、ケビント、ケビントと呼んでいましたが、一つ一つ注文のサイズに合わせて、家具職人に造ってもらって納入しました。何度か色を塗り直して使ってきたものですが、杉浦さんの所でお役に立てれば、うれし限りです」と言葉をかけていただきました。三台を休憩室に並べてみると横幅や高さ、棚の材質などみんな微妙に違っていて、お話の通りそれぞれが一点物であることが分かりました。
 今朝、丸山さんから、「先日のケビントは、業界用語でしたので、お医者さんはケビントとは言わなかったと思います。全国の医療機器関係者の共通語でしたから、ケビントの語源を調べてみました」と電話をいただきました。木喰上人と微笑仏の代表的な研究者でもある丸山氏は、九三歳になられても明確でない言葉やモノについて曖昧にせず、直ぐ調べる探究心と情熱が習慣になっているようで、頭が下がると同時に若さの秘訣と感じました。
 「医療棚は、英語ではドクター・キャビネットと言います。キャビネットはドイツ語ではケビントですから、多分業界用語のケビントもキャビネットのドイツ語からだと思います」と教えてくれました。なるほど、カルテもドイツ語で書かれていたように日本の医療技術や医学は、ドイツからの西洋医学ともいえますから、丸山氏のご指摘どおりでしょう。
 早速、パソコンで「ケビント」を入力すると「アンティークケビント」の情報やブログがいっぱいで、その人気の高さを知りました。
ちなみに診察にある四面ガラスのケビントが最も高価で、背面が木製の三面ガラス、前面だけがガラス扉の一面ケビントと価値も違ってくることや同じ三面ガラスでも棚がガラスか木製かでまた違い、ガラスの質によっても・・・と、マニアックな世界は微細な差異を競うようです。更に「納入業者のステッカー付きかどうかも大きい」と・・戴いた三台には全て「マルヤマ器械店」の金属ステッカーがきっちりですから、「お宝を三台も!」と本当に無知を恥じました。