「マルヤマ器械店」の店主・丸山太一氏は甲府の文化人としても著名で、特に木喰上人の研究家として県内外での講演や著書も多数残されています。94歳の現在も自らの資料を後進に託したり、蓄積してある貴重な話を語り部として話してくれます。先日お邪魔した折、「私は、現在の山梨大学の工学部で電気を学び、照明関係の開発に携わっていましたが、家業を継ぐよう言われ、しかたなく継いだんです。その家業が嫌で満たされなくて、写真や木喰の研究もその反動で励んだ感じです」と率直に語り、「健造先生は、人力車で往診に来てくれましたが、車夫が二人で引いて来ました」「若松町の芸者をあげての杉浦家のホタル見会を父は毎年楽しみにしていました」「三郎先生に診てもらうとすぐ直ると母は杉浦先生にしか掛かりませんでした」と。
純子さんも「太一さんの妹のちとせさんが、昭和14年の3月に三日町見付の映画館に私を連れて行ってくれました。〈オーケストラの少女〉というミュージカルで、初めて観た洋画なので忘れません」「甲府高女に入った時もちとせさんが高女の先生の所に私を連れて紹介してくれました」「父も甲府に行くと三日町に寄るのを楽しみにしていました」「私たち姉妹の高女の保証人は、みんな丸山さんになっていただきました」「ちとせさんも妹さんもそりゃ美人で頭がよくって、父が仲人をして東芝の副社長さんになったちとせさん夫妻は、父も自慢でした」と。
