2014年10月16日木曜日

杉浦醫院四方山話―370『病院の博物館』

 過日、静岡県からお一人で来館されたYさんは、ネットで当館のことを知り、「博物館のように見学できる病院は無いんで来ました」と来館動機を教えてくれました。

確かに当館のメイン名称は「杉浦醫院」ですから、「杉浦醫院〇〇です」と電話対応もしています。Yさんから見学予約のFAXが届き、記載されていた電話番号に予約受付の返答をした折も母親らしき方に「杉浦醫院の××と申しますが、〇〇さんいらっしゃいますか?」と尋ねると、「えっ留守ですが、何か?」と不安気な声に変わり、用件を話すと「病院からなので、何かあったのかとびっくりしました」と子を思う母の自然な思いが電話越しにも伝わりました。



 「塩の博物館」「自動車博物館」「タバコ博物館」「寄生虫博物館」等々ありとあらゆるジャンルの博物館や資料館がありますが、確かに病院や医院がそのまま見学施設になっている所は、日本では、数年前に開設された東京大学医学部にある「健康と医学の博物館」位しか思い当りませんから、Yさんのご指摘の通り、杉浦醫院の医院棟は昭和初期の医院が見学できる貴重な存在です。


 医学や医院の博物館として有名なバンコクの「死体博物館」は、東アジア最大のシリラート病院に隣接した博物館です。このシリラート病院の敷地には、「法医学博物館」「解剖学博物館」「寄生虫博物館」「病理博物館」「タイ医学歴史博物館」「先史博物館」と六つもの博物館があり、タイ観光の目玉にもなっています。

この中でも特に「法医学博物館」は、通称「死体博物館」と呼ばれ、病気で死亡した人の臓器や奇形胎児のホルマリン漬けなど衝撃的なものが展示されていることから「死体博物館」と呼ばれるようになりました。

こんな展示は、序の口で・・・・・・

  怖いもの見たさの好奇心旺盛な人には人気でしょうが、この種のものが得意ではない方にはおぞましい展示内容で、賛否が分かれたり物議を醸して有名にもなりました。

 もともとは、タイの国民性として死体を忌み嫌う習慣が無いことから、事故現場などの死体や死体写真集を日常的に見るというタイ人の習慣が、この博物館の誕生につながったようですから、現代日本では、せいぜい「寄生虫博物館」まででしょう。


また、病院や医療に関わる展示をして博物館としているのではなく、ロンドンやパリにある博物館は、病院だった建物に価値と人気があり、博物館となっています。

 杉浦醫院医院棟は、日本住血吸虫症の研究、治療の足跡が辿れ、かつ昭和4年築の開業医の建造物としても国の登録有形文化財に指定されていますから、日本国内屈指の病院見学施設と云っても過言ではないでしょう。