
盆の入りを前に座敷には盆飾りが用意されます。ご近所の純子さんの同級生SさんやNさんなど恒例のメンバーが3段飾りを組み立て、床の間の観音像は、曼荼羅に換わります。この杉浦家の曼荼羅は、昭和5年に健造先生が新たに設えたもので、純子さんの話では「当時の遠光寺の住職さんが書いたものだと聞いています」という大きな書曼荼羅です。「物心ついた時からお盆の曼荼羅は、これでしたが、その前の曼荼羅は怖い絵の入ったもので、2階にあると思いますから今度探しておきます」と。
盆送りと共に床の間は、茶軸に掛け替わります。純子さんが「これは、山梨の塩山あたりで詠んだ歌だと聞いています」と云うとおり「しほの山さしでの磯に住む千鳥君が御代をば八千代にとぞ鳴く」と詠まれた古今集の賀歌の書です。この「しほの山」は甲州市の「塩山」で、「さしでの磯」は山梨市にある「差出の磯」という説もありますが、真偽は不明というのが定説のようです。「さしでの磯に住む千鳥」に合わせ近隣の池も「ちどり湖」と命名したようですが、「山梨の塩山あたりを詠んだ歌」と見事に一致するのは、ロマンとしては上等だと思います。このように、8月は盆の曼荼羅を含めて杉浦家のお軸は3幅が入れ替わり、手を抜くことなく行われているご先祖様の供養を実感しました。