2017年12月14日木曜日

 杉浦醫院四方山話―527『散ってます散ってるもみじまじまんじ』

 いつの時代も教育には「口は出しても金は出さない」のが日本のお上の得意技ですが、現在学校や地域への進行中もしくは振興を図っている「口出し」は、「コミュニティー・スクール」でしょう。当館は、昭和町の郷土資料館ですから地域の児童・生徒の学習の場として、見学会など喜んで対応させてもらっていますが、今回、中学校から依頼のあった授業は、教員に代わって地域の方々が実際の授業を担当すると云う「コミュニティー・スクール」の一環でした。

 

 この「コミュニティー・スクール」について、お上である文部科学省は、≪学校が地域住民等と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校づくり」を推進しています!≫と、文句のつけようのないコピーで、この施策の音頭をとっていますから、学校運営委員会を定期開催したり地域講師を要請したりで、学校もさぞ大変なことと思います。そんな実態も分かりますから無下に断るのも大人げないと、3年生5クラスの「俳句の観賞」と「俳句の創作」の授業を地域の講師としてしてきました。


 創作の授業では、各クラス同じ「お題」で30分弱の時間内で1句の実作を課しました。思春期の中学生は、共通してチャイムが鳴るまで書き込まず「それじゃ、書けたとこまででいいから集めます」と云うと、皆そこそこの作品をパット書いて提出しました。矢張り、自分の作品をみんなの前で紹介されたりするのを避けたいのでしょう。その辺は、5クラスあると微妙にその辺の雰囲気、温度差は違いましたから、クラスづくりの重要さを感じました。


 さて、今回のお題は「当館のポスタ―を観て一句」としました。

「このポスターの何処に眼をつけるか(視角・視点)は、自由です。中学3年生ですから、必ず季語を入れ、切れ字や対比、対句などの技術、日本語表記の多様さを生かした5・7・5にすること」と前置きして、ブログで紹介したようなポスター制作の説明を簡単にしました。

 

 最後の授業になった5組の皆さんの作品を例に授業のまとめにしたいと思います。

 

*こもれびに さらさらおどる あかもみじ  (N)

  矢張り、Nさんのように河西秀吏氏が撮影した庭園池の写真を詠んだ生徒が多かったのは、それだけのインパクトがある証ですが、Nさんは全てを平仮名で表記したところに工夫と技術の後が見られます。


*紅葉散り 救った命と 見比べて  (H)    

*もみじの葉 杉浦医院の 誇りかな   (U)

*先人の 救う努力の 軌跡かな   (S)    

  西条小・常永小出身のこの学年の生徒は、小学4年生の時杉浦醫院の見学に来ていますから地方病の患者の命を救った杉浦父子の事など杉浦醫院の「知識」や「生活体験」を、HさんやUさんは池の紅葉と重ねて詠んでます。Sさんはポスター全体から「軌跡かな」と先人に思いをはせていますから「知識」の有る無しや「豊かな生活経験」は、俳句の創作にも欠かせない好例です。


*霜柱 立てども守る 石碑かな  (T)

 Tさんは、二段目中央の醫院棟前に立つ石碑に絞り、写真の季節を初冬のこの季節に置き換え「霜柱」という季語を使って、霜柱と石碑を「立つ」で対比しています。授業の趣旨を踏まえたこういう作品に出会えると教えることが楽しくなります。


*新緑の 光り輝く 薬品庫  (K)

 Kさんは、二段目左の調剤室の写真をよく観て詠みました。調剤室を5音の「薬品庫」と形容する語彙力、何よりもこの写真の窓から差し込む光の角度から「新緑の光」としたKさんの観察力と想像力は見事です。

 

*散ってます 散ってるもみじ まじまんじ  (F)

 私はプロレス技の「まんじ固め」は知っていますが「まじまんじ」は分かりませんでした。どうやら若い子の流行り言葉で、特に意味はないことを知り、あらためて読み直すと実にうまいのです。

何が?「俳句の韻律(リズム)」が完璧です。俳句の命「小さな発見」に「リズムのよさ」が名句の条件です。「散る」で韻を踏み、「ます」「もみじ」「まじまんじ」とマ行と「じ」で韻を重ねることで、リズムが生まれ暗唱しやすい句になっています。中原中也の名詩「サーカス」のオノマトぺ(擬声語)「ゆあーんゆよーん・・・」同様、特に意味はなくても効果的に使われている「まじまんじ」。中高生のはやり言葉を一つ知りました。


 

 このようなリズムの良い句は、5・7・5が出来たら、実際に声に出して読みあげてみることです。何度も読む中で、言葉や調べを整え、修正していく=「推敲」が大切です。

この推敲を日をおいて繰り返すと、ごつごつした表現も次第に滑らかになってゆくのです。

また、歳時記で、お気に入りの名句を声に出して読み暗唱するのもいいでしょう。こうしていく中で、俳句のリズムを体得できます。

「声を出して読む」事が大切!「笑はれて笑はれてうまくなる!」のです。まあ、年頃で難しいのでしょうが「照れない」ことも俳句上達の条件です。