2017年8月27日日曜日

杉浦醫院四方山話―516 『アジアの国々』

 麻布大学と科学技術振興機構が主催する研究交流事業「さくらサイエンスプラン」は、麻布大学でアジア各国の獣医師と獣医学研究者が研修を積む事業ですが、見学研修会も組み込まれていて、昨年に続き今年も杉浦醫院が見学場所として選定され、過日大型バスで来館されました。


 来日3日目に見学研修を実施するのは、今月いっぱい続く研修会をよりスムーズに進める為、アジア15か国から1人ないし2人の参加者同士が忍野八海で富士山や湧水をバックに互いに写真を撮りあったり、当館で日本の終息史を学んでディスカッションすることを通して、参加者同士のコミュニケーションづくりを進めようという目的のようでした。


 麻布大学の黄教授は、通訳も兼ねた主宰者ですが、日本住血吸虫症の研究者としても著名です。3日目と云うことですが、黄教授は30名以上の参加者の顔と国籍を全て把握していて、一人ひとりを手短に紹介くださいました。その折、国名を聞いて地図上の位置があやふやな国が数か国あり、恥ずかしながら「アジア」について調べる必要に迫られました。


 アジアは、一般的にはヨーロッパを除いたユーラシア大陸を指すようですが、言語や宗教など文化的違いのみならず、国境から人種まで政治的・経済的な立場の違いにより、様々に定義されているのが実態のようです。ですから、アジアの国々は26か国と分類されていたかと思うと国連では47か国と、倍近い開きがあります。

これは、地球上をアジア・北米・中南米・ヨーロッパ・オセアニア・中東・アフリカと7区分するか、中東を「西アジア」として、6区に分けるかの違いによるものでしょう。

また、サッカーのFIFAワールドカップでは、オセアニアの代表的な国であるオーストラリアは、アジア予選会に出ていますから、オーストラリアもアジアだと思っても不思議ではありませんね。

ことほど左様に地域や国の分類は、時代や政治でも変わり、世界的な団体の都合や恣意にもよりますから、あまり意味はないように思いますが、初志貫徹で、ここでは、国連の分類に従って「アジアの国々」について整理してみようと思います。


 私たちに一番身近なアジアは、極東とも呼ばれる「東アジア」で、地理的には日本列島、中国大陸、朝鮮半島、モンゴル高原、台湾島などにある国々です。この東アジアの国でも例えば、中国と呼んでいる中華人民共和国の香港、マカオ、台湾をそれぞれでカウントするのか否かで国数は違ってきます。


 次に身近なのがインドシナ半島、マレー半島、フィリピン諸島が地理範囲の「東南アジア」でしょうか?この中には東ティモールと云う国もありますが、私には地図上の位置が分かりませんでした。この東アジアと東南アジアの国々に日本住血吸虫症の患者が多く、先進地である日本の取り組みを「さくらサイエンスプラン」で学ぶため、参加者はそれぞれの国の国費で派遣された方々だということでした。


 

 ユーラシア大陸の北の部分はロシアですから、国際連合による区分ではロシアは「北アジア」に属しています。モンゴルもこの北アジアに分類されています。


 東・北があれば当然西・南もあり「西アジア」は、日本では中東とも呼ばれ、サウジアラビヤやクエートなど石油産油国の国々です。石油利権をめぐって、バルカン半島の国々と共に「世界の火薬庫」とも呼ばれた地域ですが、アフリカやヨーロッパに組み込まれる国もあり線引きの難しい国々でもあります。


 「南アジア」の地理範囲はインド大陸を中心に隣接するセイロン島はじめ多くの諸島で構成され、インドやパキスタンからイランイスラム共和国やブータンまで大小、個性的な国々があります。

 

 ソ連崩壊後、カザフスタンやタジキスタン、ウズベキスタンなど「○○スタン」と云った国名の独立国が多い地域を「中央アジア」と分類しています。シルクロード一帯ですから、中国に組み込まれた「新疆ウイグル自治区」も中央アジア地域です。中国は、東アジアから中央アジア、北アジアに及ぶ広大な国であることが、アメリカに勝るとも劣らない世界の大国に成長している源であることを実感します。


 中国に限らず、現在、東アジアの朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の動向から目が離せないような報道が溢れていますが、西アジアのシリアやレバノン、パレスチナ等々から南アジアのイランやパキスタンなど目が離せない国が多いのもアジアの国々の現在ですから、ある意味世界で一番ホットな地域がアジアと云うことでしょう。ホットなアジア15か国から暑い夏の日本で集中研修に励む参加者の皆さんの熱い眼差しは、私たち日本人が忘れかけている情熱=パッションと云った内からの力みたいなモノに溢れ、その大切さを教えてくれました。