2019年6月24日月曜日

杉浦醫院四方山話―584『資料・情報御礼ー5 橘田活子様』

 山梨県在住の女性詩人として既に幾冊かの詩集も上梓している橘田活子さんが、数年にわたり取材と推敲を重ねてきた詩集「茶碗の欠片(ちゃわんのかけら)」が、この度百年書房から刊行されました。

 地方病=日本住血吸虫症は原因不明の奇病とされていた時代「腹張り」とか「水種腸満」と呼ばれ、山梨県では「水種腸満茶碗の欠片」と詠われて、この病にかかると「茶碗欠片」と同じで「使いものにならない」とか「元には戻れない(治らない)」と嘆かれてきました。


 橘田さんの詩集「茶碗の欠片」は、この地方病終息に至る過程を一つ一つ丁寧に追い、壮大な叙事詩としてまとめた労作です。橘田さんは当館にも何度も足を運び、その都度「記述内容に間違いないか?」「構成上のアドバイスを・・・」と進行中の原稿を持参下さいました。

 

 更に、この詩集の帯文を小生に書いて欲しいとの要請まで受け「役不足だから」と固辞しましたが、当館が地方病終息の歴史を後世に伝承していく唯一の資料館であることに思いを致せば、当館にとっても貴重な文献資料ともなる詩集ですから、推敲段階の原稿に合わせて、推薦文としての帯文を書かせていただきました。


 その後、約一年以上かけて橘田さんは、出版社と書き直しや加除等の作業を重ね「これを最終稿にしました」と、未だ推敲していきたい思いを断ち切るように見本誌を届けてくれました。「山之口獏さんも推敲魔とも云われる程推敲に推敲を重ねたそうですが、これで良しと行かないのが作品を仕上げると云う事でしょうね」と話すと「獏さんが昔山梨に来たんです。その時私もお会いしましたが、大変面白い人で魅力的でした」と矢張り獏さんに繋がる詩人であることも分かりました。

 

 帯文を書いた当時の原稿は更に膨らみ、内容も山梨県の終息史と云うより、広島県や佐賀県の終息への取り組みや関係者を網羅して、文字通り日本住血吸虫症を克服した日本全体の終息史となっていました。一読後、百年書房の担当者に「内容が一層充実しているので、それに見合った帯文に書き換える必要」を申し出ましたが「橘田さんも私もあの帯文で十分ですから是非そのまま使わせて欲しい」とのことで、帯文はさておき立派な装丁本に仕上がりました。

「橘田活子 茶碗...」の画像検索結果

 橘田さんからは「筆稿料替わりで恐縮ですが・・」と詩集「茶碗の欠片」を過分にいただきましたので、見学時間の関係で全てを案内しきれない方に「この詩集で地方病終息史を一気に学習できますから」とプレゼントして活用させていただいています。


 同時に、百年書房から一冊2200円+税金のところを2000円で頒布可能と云う事で、20冊お預かりしていますので、ご希望の方には当館でも頒布いたしますので、お申し出ください。