2014年2月27日木曜日

 杉浦醫院四方山話―317 『民具ー1 笊(ざる)・籠(かご)』



  2月始めに旧納屋の整備工事が終了しましたから、3月24日(月)のフル・オープンに向け、民具や農具の展示を始めました。そこで、展示予定の民具から順次ご紹介していきますが、初回は、「笊(ざる)」です。


 大酒のみ人を「あいつは、ざるだ」と評すのは、いくら飲んでもどこかへ抜けて酔わないからでしょう。同様に、ざるで水をすくおうとしてもすくえないことから「何度やっても無意味、いくらやっても無駄」といった意味でも「ざる」は使われ、「ざる法」も抜け道だらけの不備な法律の別称ですし、下手な碁を「ざる碁」、でたらめな会計を「ざる会計」と云った具合に、「甲州の山ざる」はザル違いですが、「ざる」は、総じてあまり芳しくない喩えに使われているようです。

 現代でも「ざる蕎麦」をきちんと笊(ざる)で出す店もありますが、一般的には、ハリがねなどの金属や合成樹脂のモノがほとんどで、細く、薄く裂いた竹を網状に編んだ本来の笊(ざる)は、今では民具となっています。

 写真の笊(ざる)は、杉浦家に残っていた笊ですが、用途に応じて大きさが全て違います。                                         この手の深さのあるモノは、笊(ざる)と呼ばず、籠(かご)と呼ぶ地方もあるようですが、純子さんに聞くと「ウチでは、みんな笊(ざる)と呼んでいましたが、甲州弁でしょうね<いじゃる持ってこーし>って言いましたから、大きなのは<いじゃる>、小さな笊は、<こいざる>とか<こんどし>と呼んで、お米を洗ったり重宝しました」と言いますから、山梨では深さに関係なく「笊(ざる)」が一般的だったのでしょう。                                    

「笊(ざる)は、軽くて持ち運びが楽でしたから野菜を入れて洗ったり、食器も入れて運んだりよく使いました。 毎年、東郡(ひがしごおり)の人が売りに来ましたが、何時からかすっかり来なくなりました」と、「ひがしごおり」というなつかしい言葉も聞けました。                        ちなみに「東郡(ひがしごおり)」は、笛吹川の東側の地域を指す地名で、現在の笛吹市や甲州市、旧では、石和町や山梨市、塩山市等の一帯です。甲府市や昭和町など笛吹川の西で、釜無川の東側一帯は、「中郡(なかごおり)」、南アルプス市など釜無川より西を「西郡(にしごおり)」と甲府盆地を三区分した地名もすっかり聞かなくなりました。

笊(ざる)は、川で魚を獲る道具にも使いましたから、「どじょうすくい」で有名な島根県の民謡「安来節」の踊りにも「笊(ざる)」は、欠かせない小道具になっているのでしょう。竹をここまで細く、薄くして、きっちり編み込んである笊(ざる)を手に取ってお確かめください。