2011年12月10日土曜日

杉浦醫院四方山話―100 『岩手は半歩歩き出す』

 当四方山話も今回で、100話になりました。鈍感なせいか、20歳の成人を迎えた時も何の感慨や決意もなく、大人としての自覚を高めたという記憶もありません。環暦を迎えた2年前も同様で、この先の生活設計だの年金だのにも真剣に向き合うこともなく、ただただ流れに身を任せてきただけでした。まあ、非力で無能な男があくせく足掻いてみたところで、大した成果や違いもないだろうと云う思いは、高校時代に自覚したのは確かです。結果、大学や職業選びも「自己実現」などと云う観念はさらさら働かず、「とりあえず」の連続で今日に至っています。それでも死語と化した70年安保だの高度成長だのバブル経済だの・・・と、今となっては結構面白い時代の波や友人の死から3・11まで避けたくも否応なく押し寄せてきた時々の波にもただただ身を任せ、何かあっても「山羊にひかれて」など愛唱し、「吹く風まかせ」を座右の銘のように思ってきました。
寝ぼけたような戯言を書いてきたのは、「四方山話、次は100回ですね」と同僚Wさんから言われ、「そうか、100回か」なんて話していたら、科学映像館の久米川先生から、永久保存版DVD「岩手は半歩歩き出す」のメール便が届きました。「100話は、何にしようか」なんて力まなくてもちゃんとしかるべき「波」が・・・と云う実感から、つい前置きが長くなり失礼いたしました。
 この「岩手は半歩歩き出す」は、衝撃の津波映像のみならず困難に立ち向い、立ち上がろうとする岩手人をおさめた「DVD」と「震災解説書」と「岩手のうまいもの・逸品お取り寄せカタログ」の3点セットです。
 90分のDVDは、震災の実態を伝える歴史的映像としても貴重ですが、加えて「負けないで立ち上がる人間の強さ」とも言うべき復活にかける岩手県人が登場するヒューマン・ドキュメンタリー構成になっていて、観た者に岩手産の商品を一品でも購入して、困難に立ち向かう岩手人を応援しようと云う気持ちにさせる「映像の力」があります。久米川先生が、当館にこのセットを送ってくれたのも「より多くの方にこの映像を観てもらって下さい」と云うメッセージでしょう。     この大震災で、杉浦醫院と同じように三陸海岸沿いで、その地の歴史を刻んできた貴重な文化財や建造物も多数消失しました。津波にのまれた陸前高田市の「酔仙酒造」は国の登録有形文化財でしたが、近く登録を抹消されると聞きました。「有形」文化財の健造物が消失して「無形」になってしまったから抹消すると云う事でしょうが、桜の名所でもあった酔仙酒造の「映像」は、多数残っているでしょうから、消失した酔仙酒造の「映像」は、そのまま大震災の有形でもある訳ですから、「抹消」する事なく、大震災を語り継ぐ一つとして、活かせないものでしょうか。