2013年5月25日土曜日

杉浦醫院四方山話―241 『落書きの魚三匹春夕焼』

5月23日木曜日の山梨日日新聞の文化欄に「花曇ふるさと俳句大会」の入賞作品が選者の講評と共に発表されていました。一般の部の特選に選ばれた乙黒幸江さんは中央市の方ですが、甲府昭和高校で永く教鞭をとり、退職後は玉穂生涯学習館(図書館)の館長を務めていましたから、ご存知の方も多いことと思います。現在は山梨県人権擁護委員連合会甲府協議会の会長として人権活動の先頭に立ってご活躍ですが、県立図書館支援ボランティアや創作活動も続けています。 
 
 杉浦医院に来館者され、俳句や短歌を詠まれた方は、今までも何人かいて作品も頂戴していますから、フルオープンの折には、詠まれた題材の写真と作品を組み合わせた絵葉書を作成して、来館土産に売り出そうかと思案しましたが、勝手なコラボは、文芸作品も写真も殺しかねない危険と何より著作権にかかわりますから、勝手は出来ません。

 乙黒さんの作品について「私はこの句のように読み手に自由に想像させる句が好き。子どもを見つめる目の優しさがよく出ている」と選者の保坂敏子氏は講評しています。
五七五という限られた字数で形象する俳句にあっては、「自由な想像」による表象が大きなウエイトをしめている訳ですから、そのものズバリの形象写真を付けることが、作品を殺すことにも繋がりかねません。

 「人権擁護委員の研修会で来館された乙黒さんが、医院棟玄関壁の落書きとそれを描いた子どもに思いを馳せて詠んだ一句」と云う私の勝手な独断ですが、純子さんにこの句を紹介すると「玄関の魚が、時間が経ってからこんないい歌に詠まれて、描いた子も褒めた父も魚もみんな幸せですね」と喜びましたから、「落書きの魚三匹」は、杉浦医院の落書きであると勝手に断定して感想を述べ合うのもあながち間違いではないでしょう。

「落書きの魚三匹春夕焼 乙黒幸江

杉浦医院内の庭園、建造物、展示品から落書きまで、歌人・俳人には宝庫でもあるようですから、吟行などにも是非ご利用下さい。