2011年1月10日月曜日

杉浦醫院四方山話―18 『現代』

 杉浦医院に「社会教育主事実習」に来たK大学のSさんが、杉浦医院内の本棚を見て、「えー、芥川龍之介が現代小説全集にある」と驚きの声を発しました。大正時代発行の「現代小説全集」ですから、芥川や島崎藤村が「現代」でも当然ですが、「現代」を現に今、進行している時代と規定すれば、村上春樹など現在、作品を書いている作家が「現代作家」ということになり、「えー」となったのでしょう。紫式部の恋愛感情や吉田兼好の無常観など、文学や芸術のテーマは、時代を超えて現代を生きる人間にも共通し、一向に色あせませんが、分野によっては、それぞれの時代の「現代」は、現在では考えられないこともたくさんあります。
 杉浦健造・三郎父子の時代の予防接種では、同じ注射針で薬を何回も吸い上げて、次々に打っていく「針の使い回し」は、日本中でごく普通に行われていました。その後、WHOから政府が何度も勧告を受け、全国の医療機関から完全に「針の使い回し」が無くなったのは1980年代に入ってからです。医療の現在は、文学とは対照的に当時の常識は、現在の犯罪へと大きく変わりました。
同様に、映像資料「人類の名のもとに」は、山梨県と米軍406医学総合研究所の共同研究と住民、行政の一致した取り組みで、地方病を撲滅寸前まで追いつめたというテーマの記録映画です。その中で、宮入貝殺貝に農薬「ペンタクロロフェノール」が開発され、大変な成果を上げたことが紹介されています。このペンタクロロフェノールも現代なら「とんでもない環境汚染農薬」という評価です。「河川や湖沼、地下水といった環境水の化学物質による汚染は、現代では、世界的な大問題ですから、ペンタクロロフェノールを使った甲府盆地の映像は、今ではとても考えられないことです。殺貝作業に従事した住民には、この薬の中毒で苦しんだ人がいたかも知れませんね」と科学映像館で配信されている「人類の名のもとに」を観た、科学者遠藤浩良先生からご教示いただきました。
 このように、当時は、当たり前でも一定の時間経過の中で「あれは一体何だったのだろう」という事は、記憶に新しいところでも「ダイオキシンと小型焼却炉処分問題」始め・・・忘れることと自分が現在、享受している状態がベストだと考え保守的になるのが日本人の特性だとも言われています。そう言えば、つい60数年前まで「一神教の神風国家」万歳だった日本人が、北朝鮮やアルカイダを「洗脳云々・・・」「言論の自由が・・・」と評論したり、小馬鹿にしているのも恥ずかしいことだなー・・・と。