目黒寄生虫館の入り口には、高さ2mのホルマリン水槽に全長8,8メートルのサナダムシが、来館者を迎えるように展示されています。このサナダムシも亀谷先生が男性患者から駆除したものだそうですが、これだけ大きなサナダムシが腸に住みついていたけど特に痩せるわけでもなく、苦痛などの自覚症状もなかったそうです。
日本のサナダムシは、正式名称を日本海裂頭(れっとう)条虫と云い、体幅が1センチ前後で体長は2mから12mにもなる長いきし麺のような寄生虫です。たくさんの節と節で繋がっていて、その一つ一つが生殖機能を持っているので、一日に数センチ単位で大きくなりますから、長さ5~6メートルの成虫は一般的のようです。
体内に8匹のサナダムシが居て、さすがに8匹いると腹痛がしばしばあったことから来院した女子高校生は、全てを駆除したら合計45メートルにもなったそうです。それでも腹痛以外は、丸々太って顔色もよく健康そうだったので、普通は一人の体内に一匹がサナダムシ寄生のオキテのようですから、一匹なら実害もなく共生できたのでしょうが、間違って八匹も・・・が、腹痛と云う実害にも繋がって、駆除の運命に合ってしまったのでしょう。
藤田カイチュウ博士は、体内にサナダムシを飼いながらの人体実験を著書や講演で報告していますが、人間を終宿主とするサナダ虫は、栄養を横取りする以外は無害なので、栄養過多の人にとっては、栄養を横取りして、コレステロール値や中性脂肪を激減させるありがたいものでもあります。
この特徴を逆手にとってダイエットにという話にもなりますが、女子高校生のように45メートル飼育していても「丸々」と云った事例もありますから、日本のサナダムシ・日本海裂頭条虫には、効果てきめんのダイエット効果はなさそうです。
サナダ虫でも、西洋のサナダムシ・広節裂頭条虫は、ダイエット効果はあるようですが、その反面副作用も強く、重度の貧血や下痢など生活にもかなりの支障を来すようですし、どちらのサナダムシにも寿命がありますから、思う存分食べながらもダイエット効果を出し続けるには、藤田カイチュウ博士のように「きよみちゃん」とか「ひろみちゃん」とか数代(確か5代目だったか?)に渡って飼い続け、かつサナダムシが嫌うキムチとかの刺激物やお腹を冷やすビールなどは控えてあげないといけないそうですから、生き物を育てる覚悟と愛情が必要で、「いくら食べても痩せられる」と云った虫のいい話は無いようです。