昭和8年当時の物価は、天丼40銭、封書3銭と円の下に「銭(せん)」の単位があった時代で、高級官僚の初任給が75円、小学校教諭初任給が50円だったそうですから、それで換算すると、当時の学校特価1200円は、現代の500万円前後、正価1450円は、600万円前後になります。杉浦家は、学校ではありませんから、正価の1450円で購入したと考えるべきでしょうか?・・・

確かに、YAMAHAの創業者は山葉何某(失礼)でしたが、この時代には、既に社名は日本楽器製造株式会社で商標はYAMAHAになっていました。ピアノにもYAMAHAとしっかり入っていますが、「皇太子殿下御誕生記念」として売り出す関係上、ピアノは漢字に置き替えられないものの「YAMAHA」は「山葉」と漢字表記して、日本の国体に沿う表現が用いられたのでしょう。ピアノもアップライト型を「竪型ピアノ記念型」、グランド型を「平台ピアノ記念型」と苦心の漢字転換がうかがえます。カタログとは云え、文部省謹作「皇太子殿下御誕生 奉祝歌」の歌詞も3番まで載り、「予約限定台数 全国百台限り」と、あくまでも皇太子誕生を祝しての記念販売であることが強調されています。
「父が甲府の内藤楽器店に注文して購入しました」と云う純子さんのお話のとおり「甲府市富士川町12 内藤楽器店」と押印された専用封筒に納まっていましたから、山梨県の日本楽器代理店が当時も内藤楽器店であったことも分かります。