2012年3月8日木曜日

杉浦醫院四方山話―126 『坂下嘉和氏』

 昨年の10月27日木曜日付、杉浦醫院四方山話―87 『ボランティア』 の中で、坂下嘉和氏について、イニシャルS氏で、以下のように紹介しました。――――――(前段略)もうひと方、竜王のS氏は「気分を害さないでください。私の趣味ですから・・」と開館早々、道具一式を持参して、トイレの便器を真っ白にして下さいました。「これを使えば面白いくらい取れるんです」と秘密兵器と使い方まで伝授してくださいました。そのS氏は、3・11以後、既に10数回宮城と山梨を往復して、復興ボランティアを継続しています。「行けばやることはいくらでもあることが分かっているので、用事を済ませたら、戻らなければ・・と、じっとしていられない」と云います。この活動を通して、彼が考えたことや伝えたいことを「OTOUのブログ」で、発信してくれています。本当の情報と共にS氏の人柄と思考の深さ、視点の確かさが率直な文章に醸しだされ、毎朝のチェックが欠かせません。「がんばろう日本」だの「東北の被災地に向けて・・」と云った空虚な「言葉」が、日本中に氾濫している現在、自分自身を現場に置いて、黙して奮闘している方々の実践と言葉の重みは、そのまま人間が生きるということの価値と品格を教えてくれているようで、恥じ入るばかりです。――――――――
このS氏、坂下嘉和氏が本日(8日)の山日新聞一面で大きく報じられていますので、あらためて本名で雑感を記しておきたいと思います。
 もう十数年前になりますが、町の文化講演会に生物学者・池田清彦氏を招聘しました。講演の中で「最近、ジョギングやウォーキングを欠さない人が多いけど、あれは走らないと頭がむずむずして気持ち悪いから走ってるだけです。走ることで脳がドーパミンを分泌して気持よくなる一種の中毒ですから、タバコや麻薬が悪と云うならこれもほめられたものじゃないんです」と池田氏流の歯切れで一笑に付しました。その時、立ち上がって拍手の賛意を示したのが坂下氏でした。当時の坂下氏は竜王走ろう会の中心メンバーで、旅先でも毎朝のランニングは欠かさないのを知っていましたから「我が意を得たり」と拍手する姿に驚きました。終了後「いやあ面白かった。スッキリしないから走っていることは自覚していたから、ああ云う風に本当のことをズバッと話してくれると」以来、坂下氏とは何かにつけて、ご一緒してきました。
 先月の山日新聞でも脳科学者中野信子(縁者なので呼び捨て)が、「人を助ける利他行為は、脳に良い刺激と快感をもたらす」旨、指摘していました。この一面を坂下氏自身は自覚しての20回以上に及ぶ東北行きでしょう。「自分のモチベーションも上がり気持ち良いから行くだけで、特別立派なことをしているとは思わない」というスタンスが彼の言動からはうかがえます。これこそ彼の優しさと凄さだと思いながら「OTOUのブログ」を愛読してきましたが、今日の雨宮記者の的確かつ絵物語のような文章と広瀬カメラマンがとらえた笑顔、「山日ヤルジャン」です。