2010年11月16日火曜日

杉浦醫院四方山話―6 『手拭い』

 甲府市古府中町で「奈麻余美文庫」を主宰する植松光宏さんは、本だけでなく“手のぐい”(甲州弁で手ぬぐいの意)の収集家でもあります。山日新聞記事で、植松さんが1930〜50年代に作られた約70点の「手ぬぐい展」を甲府で開催していることを知り、取材に来た山日新聞のA記者に杉浦家の手ぬぐいを植松コレクションに寄進すべく託しました。

「姉さん被り」今の塵除け。後ろから持ってきた端を
上から前に廻して、額の下から差し込んでいると思われる
  手ぬぐいは、現代ではタオルにおされて、脇役の感もしますが、本来は寒暑や塵除け、祭礼における装身具として、頭にかぶる由緒正しい木綿平織りの布です。物のない時代には、汗をぬぐうだけでなくいろんな使い方をされ、縫い合わせて風呂敷や布団にまでなっていました。
 植松さんは、手ぬぐいを文化として楽しんでいるようなので、杉浦家の手ぬぐいも、杉浦家と昭和町の歴史と文化、風土を象徴していますので、純子さんの了解のもと贈りました。

 杉浦家から町に寄贈いただいた手拭いは、3種類あります。純子さんの説明では、「これは、お子様用です」という鶏を描いた手拭いと「手伝いに来てくれた方に配った大人用」が2種類です。この大人用は、2種類とも絵柄は「ホタル」です。白地に紺染めで川と草木を配し、3匹のホタルが黄色く発光しながら舞うシンプルかつ絶妙なデザインの絵柄に「ホタルの里 杉浦」の文字がさりげなく入っています。この文字も「何という書家の字ですか?」と聞いたほど味わい深い字ですが、「これは 母の字です。私は全然ダメですが、母は奇麗な字を書きました」と、必ず自分のことはへりくだる「能ある鷹の爪の隠し過ぎ」が純子さんです。
3種類とも反物で注文してあり、その都度人数分切り分けて渡していました。「うちの手ぬぐいは、ちょっと大きめなので使い勝手が良いと評判でした」と言うとおり、長さが一般的なものよりずっと長めです。子ども用も用意してあったということは、子どもも当時は、一定の年齢になれば労働力として手伝いに来ていたのではないかと思いますが、赤い鶏の絵柄から、豆絞りにもなるので、この地域一帯の子どもの名付け親として、杉浦家が、お祭りなどの折に子どもたちへのプレゼント用に作ったものでしょう。

*大人用2種類の「ホタルの里杉浦」手拭いは、1階洗面室の源氏ホタル紹介コーナーに展示中。