2015年11月18日水曜日

杉浦醫院四方山話―456 『杉浦醫院のピアノと過ごす午後のコンサート』

11月1日(日)に当館で「杉浦醫院のピアノと過ごす午後のコンサート」が開催されました。

 折に触れて杉浦醫院のピアノは紹介してきましたが、「皇太子(現天皇)生誕記念」とか「日本に数台」と云った価値もさることながら、矢張りピアノは「弾いて」「弾かれて」その音色や響きを実際に聴いた人の評価で価値が決まることを実感しました。

今回の院内コンサートは、出演者お二人の総意で「杉浦醫院のピアノと過ごす午後のコンサート」と銘打たれました。

 当日のプログラムも杉浦誠さんにご用意いただきましたが、全16曲の曲目と作曲家のエピソードなども演奏の合間にお二人から紹介され、曲目選定も音楽史の概要に沿ったものでした。

 好評と云えば、ピアノの音色が「昨年と全く違う」と参加者からも指摘されましたが、ピアニストの佐藤恵美さんもスピーチの中で、「素晴らしい音で、弾いていて楽しくなります」とか「このピアノが欲しくなってしまいました」と話され、杉浦誠さんも「流石、辻村さんですね。とてもいい音色で聴き入ってしまいますね」と蘇ったピアノに感嘆の声が続きました。


 圧巻は杉浦誠氏のテノールで、マイクを使わなくても駐車場まで届く声量は、体全体から声を出しているようにも見え、院内を揺るがす程の迫力で、「声楽家の歌唱をこんなに近くで目の当たりに出来たのは初めてで感激しました」と参加者も興奮気味でした。

昨年の院内コンサートでは、数曲で退席した純子さんも「私は視力が衰えて、見えませんから廊下で聴かせていただきます」と条件の悪い廊下でしたが、自分が使ったピアノの音色を懐かしみながら最後まで聴き通しました。

休憩時間に純子さんにこのピアノにまつわる思い出などインタビューしましたが、「こんなにいい演奏会を開いていただいて、ピアノも新館もとても喜んでいると思います」と話すと、会場は拍手に包まれ、文字どおり「杉浦醫院のピアノと過ごす」時間が共有出来たことを喜び合いました。


 コンサート会場のような音響条件は望むべくもない院内コンサートですが、観客席はガラス戸を外した診察室ですから、ピアノ再生にご尽力いただいた辻村氏が、「客席が向こうならピアノの位置はここしかありません」と蘇ったピアノを4人で押して、東側の窓際に移動しました。

「客席に向かって反響版を上げないとせっかくの音がお客さんに届きません。グランドピアノがあっても反対向きのまま使われている学校などよくありますが、もったいないです」と、これまでの位置から演奏に使うことを前提にした場所に移動したのも好評だった一因かもしれません。

 

今コンサートを機に県内調律師では修復不可能とも云われたピアノが見事に蘇り、人数こそ50人前後と限界はありますが、院内コンサートとして高レベルな音楽文化を楽しめることが分かりましたので、定期開催も視野に計画していきたいと思います。

ご出演下さいました杉浦誠様と佐藤恵美様には重ねてお礼申し上げます。