製作:日映科学映画制作所「人類の名のもとに」
1959年 30分 (カラー) 資料提供:山梨県/米陸軍第406総合医学研究所/山梨県中巨摩郡昭和町
【製作者の声】この映画は、山梨県で多くの方が永らく苦しんだ地方病、日本住血吸虫撲滅の模様を、実話にもとづき製作される。出演者も農村の青年孝三、母およし、妹しのぶ以外、すべてご本人が登場、杉浦三郎博士自身も。
地方病の映画では、もっとも古いもの。
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H・P閉鎖中の3月末には、「第82回日本寄生虫学会」が、東京医科歯科大学湯島キャンパスで開催されました。この学会期間中、会場で科学映像館が所蔵する日本住血吸虫関係の映像が上映されることになったと、科学映像館の久米川先生から連絡をいただきました。そして、「その関係でしょうか、この所、日本住血吸虫関係の作品へのアクセスが連日多数続いています」と教えてくれました。
当館が探していた幻の映像≪人類の名のもとに≫もその一本ですが、これは久米川先生のご尽力で、製作会社日映科学製作所の倉庫で埃をかぶっていたフィルムが見つかり、久米川先生は、トップ映像右上に「昭和町風土伝承館」の文字も挿入して、デジタル化してくださいました。
先生も医科系大学の教授でしたが「いやあ、びっくりしました。日本にまだ寄生虫学会があったなんて知りませんでした」と驚いていた程ですから、大変地味な学会なのでしょうが、東京医科歯科大学を拠点に研究活動を継続しているようです。
そのリーダーが太田伸生教授ですが、太田教授は開館以来複数回、外国人研究者を案内して来館され、貴重なお話やアドバイスをいただいてきました。
特に、今年の学会は「ミヤイリガイ発見百周年記念」の年に当たることから「住血吸虫病との闘い~宮入慶之助に学ぶ~」の市民公開講座も開かれ、盛況のうちに閉会したそうです。学会事務局から杉浦醫院のパンフを会場に置いて、当館の存在も周知したいとの連絡もいただきましたので、手づくりのパンフを送り、参加者に配布いただきました。
山梨・日本では、終息に至ったこの病ですが、現在も患者数では、世界三大病の一つに挙げられるほど猛威をふるっているのが実状で、中国やカンボジア、フィリピンをはじめとする有病国の実態調査から有効対策や医薬品の開発など日本寄生虫学会の研究や成果は、世界の有病地帯を対象にしたものになっているようです。
1959年(昭和34年)制作の「人類の名のもとに」は、文字通り日米で協力して、人類の名のもとにこの病を世界から終息させようと製作された映画で、その精神は日本寄生虫学会に受け継がれ、脈々と継続されている訳ですから、54年前のこの地域の風景や生活ぶりも貴重な映像として楽しめるこの映画を当館2階の大型モニターでご鑑賞ください。