杉浦医院内に設置されている照明器具を順次紹介してきましたが、今回の照明は、どこの照明かお分かりでしょうか?
写真左は、奥の小部屋から、右は、入口側の小部屋から撮影したもので、壁で仕切られた両部屋の照明として設置されているものです。
そうです。杉浦医院内のトイレの照明です。
男の特権でもある立ち小便を保証する男子用小便器が、かつての家にはありました。洋式便器の発達と共に男女兼用が当たり前のように男子用小便器は、すっかり現代家屋から姿を消し、公共トイレ等に残るのみと云った感じで、個人の住宅で男子用小便器があるお宅にお邪魔すると家主の姿勢と位置が読み取れ、思わず「いいぞ―○○」と主を讃えたくなります。男女兼用洋式トイレの普及で、男でも坐して小用する子どもや若者もいるとの話も聞きましたが、中沢新一氏が著書「日本の文脈」の中で、「僕の曾祖母は文久三(一八六三)年生まれだったんですが、このひいおばあちゃんはよく立ち小便をしていました。とっても上手に、着物のすそも汚さないで。江戸時代の京・大阪の記録を見たら、女の人たちはみごとに立ち小便をしていたらしい」とあり、実際、江戸時代以前は、この国の女性は、全国的に立ち小便をしていたようですから、「立ち小便を男の特権」などと思い込んでいるのも浅学の極みかも知れません。季節がら「下ネタ半島冬景色」になりそうですから話題を変えて・・・
これも「かつて」の接頭語が必要になりますが、せんだみつおと云う芸人が、「便所の100ワット」と揶揄されつつも「無駄の明るさ」を売りにテレビで騒いでいましたが、杉浦医院のトイレには60ワットの白熱球が納まり、ご覧のように女性トイレ側の3面ガラスが開いて電球の交換が可能な構造です。黒枠の3面体で左右全く対照、同形で、同じ明るさでそれぞれの小部屋に必要にして十分な明るさを灯すこのトイレ用照明も80年以上前のものですから、日本の照明器具の造りの良さとデザインに感心させられると同時に「良いモノを末長く」の杉浦家の選択、購入の一貫性も光っています。