2013年2月1日金曜日
杉浦醫院四方山話―217 『2月の甲府盆地風物詩』
昭和町の源氏ホタルが国の天然記念物に指定されていた頃、昭和町の「ホタル祭り」には、甲府盆地の初夏の風物詩として、身延線に臨時電車や山交バスが増発され、多くの人が蛍合戦の見物や露店を楽しみに訪れたそうです。テレビが全家庭に普及する以前は、こう云った季節ごとの「祭り」を子どもに限らず大人も楽しみに出掛けていました。
今よりもっと北風が強かった(ように思いますが)真冬2月の楽しみは、節分の2月3日でした。意味も分からず「だいじんさん、だいじんさん」と、横近習町大神宮から柳町大神宮にかけてのお祭りの賑わいと赤鬼、青鬼は、風月堂のきりざんしょうとセットで、待ち焦がれました。祭りには、綿菓子に代表される食べ物が付き物で、お小遣いを握った子どもの目当ですから、「切山椒」が商品名なのでしょうが、平仮名で「きりざんしょう」と書かれていました。
「きりざんしょうは風月堂だ」と、ロクに味の分からない親父がこだわっていたのも風月堂ときりざんしょうがセットで記憶に焼き付いている一因かも知れません。甲府が県都としての位置をしっかりキープしていたからでしょうか、人で溢れ返った大神さんに、もう50年近くご無沙汰ですから、現在も昔同様の賑わいなのか分かりませんが、きりざんしょうの味は、春を告げる甘さでもあり、人込みから恐るおそる覗いた鬼と共に冬の甲府の風物詩でした。
甲府盆地に春を呼ぶ祭りとしては、2月10日の旧若草町の十日市も有名ですが、ボロ電と呼ばれた路面電車も廃止され、自動車も普及してない時代でしたから、足がなかったのが大きかったのでしょう、甲府市北部では「十日市に行った」とか「行こう」という話題は、家族からも友達からも聞きませんでした。私の大神さんが中巨摩郡一帯では十日市だったのでしょう。「十日市で売っていないものは猫の玉子と馬の角」と言われているそうですから、大神さん同様多くの露店が並ぶなかには暴力団が関与するものもあり、警察の要請で露天商の参加を認めなかった昨年は、中止となったようです。
監督の暴力、暴言は、日本のスポーツ文化であるように、露店も日本の祭り文化ですが、安全・安心第一の無菌社会一直線の現代にあっては、ヤリ玉にあげられ集中砲火の感も否めません。口の周りがまっ赤に染まる有毒着色材の食べ物を露店で買っては喜んで育った自分ですから、「そんなに大騒ぎすることないじゃん」が本音ですが、すぐ忘れ、繰り返すのも日本人の特性だそうですから、この騒ぎも次のターゲットまでの命でしょう。