2015年5月13日水曜日

杉浦醫院四方山話―407 『地方病研究者・加茂悦爾先生』

 純子さんは「父は、共立病院に加茂先生がいるから、地方病の事は大丈夫だと、よく言っていました」とか「そうそう、加茂先生のお嬢さんは私と同じ純子さんだそうですが、私と違って優秀で、女医さんになっているそうです」と、加茂先生の事は良く話題にされていました。



 その加茂先生は、これまで何度か来館いただきましたが、まとまった話をする時間がありませんでした。今回、加茂先生と林正高先生、梶原徳昭先生の三人がお揃いで来館され、約2時間じっくり話す機会がもてましたので、現役地方病研究者の御三方を順次ご紹介いたします。

左から林正高先生・加茂悦爾先生・梶原徳昭先生

 加茂悦爾先生は、現在巨摩共立病院名誉院長ですが、現在も週一回は外来患者の診察に出ていらっしゃるという現役の内科医です。

 先生の話では「信州大学を卒業して山梨に戻って医者を始めましたが、杉浦三郎先生から働きながらでも研究を深めた方がいいと励まされ、信州大学の「第一病理学教室の研究生」になって、「日本住血吸虫性肝硬変の免疫病理学的研究」をしたそうです。
「櫛形から松本まで車で通いましたが、茅野の辺で渋滞に巻き込まれることが多く、スピード違反で何回か捕まりましたよ」と、気さくに話してくれましたが、医者をしながら週何度か信州大学まで通って、博士論文を書き上げたという探求心とバイタリティーが、現在の若さの秘訣かと思いました。


 今回、加茂先生が持参くださった「お土産」は、言葉や絵図ではなかなか理解しにくい日本住血吸虫の動画映像でした。

 これは、先生が研究の過程で撮影してきたもので、住血吸虫の虫卵が水中で孵化してミラシジウムとなり中間宿主のミヤイリガイに侵入していく様子から、ミラシジウムがミヤイリガイの中で成長してスポロシストへと変わっていく姿、更にミヤイリガイから再び水中に出て、泳ぐように動いて人間や哺乳動物の皮膚から終宿主の体内に入っていくセルカリアの映像まで、日本住血吸虫の成長過程が手に取るように分かる貴重な映像です。



 早速、二階の座学スペースで加茂先生の解説付きで映像を拝見した私は「先生この映像を科学映像館にも提供して・・・」と、お願いしましたら「いやぁ、映像だけじゃ何が何だか分からんでしょう。そういう意味では未完成です。娘の純子が4月に学会の発表があり多忙のようで、それが終わったら、私の解説やテロップを入れた音声入りの映像に仕上げてくれるそうですから、その映像を活用してもらった方がいいと思いますよ」と、お嬢さんとのコラボでDVD化した経緯についても話してくださいました。



 ご高齢の加茂先生ですが、映像を試験的にユーチューブに投稿したり、メールでの迅速な連絡など情報技術にも長けているのも現役研究者の証でしょう。

 既にご来館いただいた方々も含め、日本住血吸虫の生態理解にこの上ない貴重な映像資料が加茂先生父子のご尽力とご厚意で、当館で観賞することが出来るようになりますので、一斉に芽吹き出した庭園ともども見学にお越しください。