2014年4月13日日曜日

杉浦醫院四方山話―327『民具-5 魚篭(びく)』

 NHKの朝の連続ドラマ「花子とアン」が人気だそうで、東京在住の同級生たちも故郷の言葉「甲州弁」が懐かしく、「ハマっている」と云ったメールが飛び交っています。日本語は、方言と云う豊かな言語資源に恵まれているのも大きな特徴でしょう。

 「花子とアン」で使われたかどうか、私はドラマを観る機会がありませんので分かりませんが、「あのビクっちょはしわい」とか「あのビクがちょべちょべしやがって」と云った具合に女の子や娘を揶揄する時などに「ビク」もよく使いました。ちなみに前者は「あの娘は生意気だ」、後者は「あの女が調子ずいて・・とか、出しゃばって」と云った感じでしょうか。

この甲州弁「ビク」の語源についも調べてみたいと思いますが、同じ「ビク」の音で「魚篭(びく)」があり、籠やザルと同じく竹で編んだ漁具です。

 
 「資源に乏しい日本」と言われて久しくなりますが、豊かな森林資源や植物資源、水資源などは「資源」の範疇に入っていないのでしょうか?    日本人は、古代から恵まれた草や蔓(つる)、竹や植物の皮などの植物資源を利用して、身近な道具をつくってきました。

 民具ー1で紹介したざるやかごは、すでに縄文時代から存在していたそうで、小泉和子氏の著書『台所道具いまむかし』によれば、かごは「もの入れ」で、ざるは「水切り道具」であるというふうに分類されてきたそうです。

 方言同様、かごやザル、魚篭の材料も、それぞれの土地に育った多種多様な植物が使われ、魚篭やかごを編むのに使われてきたのが、生のときは柔軟で細工がしやすく、乾くと硬く丈夫になる「メゴ笹」という笹だそうです
 笹と竹の違いは、 一般的に背が高いものは竹、低いものが笹で、筍の皮がはがれ落ちる物が竹、ずっとはがれない物が笹というような区別があるようですが、自然界のモノは、ハッキリ区別はできないのも特徴でしょう。

 竹の魚篭は通気性がよいので、魚が傷まない為、現在でも釣り人には人気ですが、籠やザル同様プラスティック製のものも一般的になっているようです。用途に応じて編み方や形、デザインなど地方色を活かした素晴らしいものが多く、漁具と云うより人の心のやさしさやぬくもりが伝わってくる民具として、調度品にもなっている魚篭ですが、現在、写真の二点が展示してあり、「魚篭があって釣竿がないのも寂しいね」と、杉浦精さんが、「親父がアユ釣りに使っていた竿だけど」と、矢張り竹製の釣竿を持参くださいましたので、次話でご紹介いたします。