杉浦醫院四方山話―316 『1ホール・クロック完全修復』
当311話「古時計・ホールクロック」で紹介した杉浦醫院の大時計が、すすき時計店の鈴木省三氏の手により、完全に修復され、「コチ・コチ」と確かな時を刻み始めました。
この時計は、重錘式置時計という機械時計で、動力源は重りで、重りの垂れ下がる力で動きます。
1キロの重り2個を巻き上げると重りを吊り下げているワイヤーが文字盤の裏の歯車を動かし、約5日間で重りは徐々に下がって時を刻むわけですから、部品は全てしっかりした金属で出来ていて、歯車がしっかりかみ合っていなければ100年、200年と動き続けられないそうです。今回、鈴木さんはたくさんの歯車を外してオーバーホールした上に金属に付着した黒い錆類も全て落す作業をして、可動に至ったようです。
鈴木さんは「預かったら、ちょうど大雪になって、この修理にかかりっきりになれました」と笑い「この重りを吊り下げる糸をいろいろ探し、釣糸のテグスなども使ってみましたが伸びてダメだったので、1ミリのワイヤーを入手して何とかなりました」と「遅れたり進んだりの調整は振り子の長さで直せるので、現在は、1週間に1分弱進むかなといった所まで調整しました」と修復した大時計を我が子のように丁寧にリセットしてしてくださいました。
「文字盤だけは、何を使ってもこれ以上きれいにはなりませんでした。まあ古色蒼然としてかえってピカピカより味がありますね。箱もいい木で出来ているし、振り子もこの時代のモノはいいですね」と。
純子さんの記憶では「最初は待合室にあったものを二階に上げた」そうですから、修復された大時計は、当初あった待合室に設置してもらいましたので、杉浦醫院玄関を入ると真っ直ぐ正面にこの時計が鎮座しています。
文字盤の12の下にある小さな丸い秒針盤が、振り子の揺れに合わせてコチ、コチと回ります。
3と9の内側にある穴は、ゼンマイ式時計と同じですが、ここに巻き上げカギを挿して、右に巻くと重りが巻き上がります。左右とも鈴木さんが、ここまでと表示してくれた高さまで巻き上げると重りが5日間で下まで降りて来るので、また巻き上げれば・・・の連続で、永遠に動く仕組みになっています。
クサリで重りを下げ、クサリを引っ張って重りを上げるクサリ式の重錘式置時計は、たくさんありますが、重りを糸で吊っていたこの時計は、鈴木さんも初体験だったそうですから、実物をじっくりご鑑賞ください。
大変なお手数と技術で、見事よみがえった大時計ですから、鈴木さんに記念写真をお願いしましたら「そんな、仕事で直しただけだから・・・恥ずかしいよ」と嫌がられましたが、「一枚だけ」と無理を言って、時計と並んでいただきました。