2012年4月20日金曜日

杉浦醫院四方山話―136 『硯(すずり)・硯箱―3』


 上の写真は、数ある杉浦家の硯の中で、共通して蓋付きの硯三組です。左の硯は、蓋だけですが右の二組は、硯が納まる下箱も付いています。それぞれの蓋も下箱も硯の形状に合わせてですから、硯が出来上がってから彫って作られたものでしょう。
雨畑川沿いの上流には、雨畑硯のそれぞれの製造元の採石場となる岩壁をくり貫いた洞窟があるそうです。そこで「雨畑硯」を作るための原石となる粘板岩を採掘しますが、この原石の質で、硯の良し悪しは決まるそうです。墨がよく下りる硯の石は、石の粒子が均一の石で、そういう良質な石は、雨畑でも至る所にある訳ではなく、一見同じに見える岩でもプロが見ると使える部分は、極限られているそうです。
 木の工芸である硯箱に石の工芸・硯が納まる訳ですが、日本では硯は、長く書道に使う四角いものが主流でした。これは、墨を磨って文字を書くという文具としての実用性としての硯ですからもっともなことでしょうが、近年、鑑賞用の硯も美術工芸品として出品されることも多くなりました。雨畑硯の現代作家・雨宮彌太郎氏も「ただ硯をみただけで心が落ち着くような造形美も、ひとつの硯の形として追及していきたいと考えています」と書いています。杉浦家の硯や硯箱は、撫でてみたくなるようなきめ細かな材質やシンプルにして飽きないデザインなど工芸的にも鑑賞に価しますので「杉浦家の硯・硯箱展」を企画して公開いたします。