杉浦三郎先生亡き後、山梨の地方病の治療から研究と対策を担ってきた林正高先生が、先月81歳で亡くなりました。葬儀では朝比奈豊・毎日新聞社会長が「最先端の医療でフィリピンの人たちを助けた、日本の良い時代の、偉大な方の一人だったと思います」と別れを惜しんだことも報道されています。
今年、先生から戴いた年賀状でも昨年夏、診察中に心肺停止の発作を起こし山梨大学で弁置換術と佳動脈バイパス術を受け、「超高齢にもかかわらず副症状の合併もなく過ぎました」と大病されたことが記され、手書きで「無事生還しました。本年もよろしくお願い致します」と書き添えられていました。
当館が地方病終息20周年の今年、「地方病流行20周年記念講座」の開設を計画し、林先生と加茂先生には、そのメイン講師をお願いした折も「涼しい時期が、私も参加者もいいですね」とおっしゃっていただきましたので、そろそろ具体化について連絡しようと思っていた矢先の訃報でした。
山梨の地方病が一段落着くと林先生は、この病気が猛威を振るっていたフィリピンの患者救済に立ち上がり、多くの患者の命を救ってきたことは、ご存知のとおりです。
当館開館に際しても協力を惜しまず、多くの資料も先生からご提供いただきましたが、その中には医学資料のみならず、作家・大岡昇平氏の代表作「レイテ戦記」の記載不備を指摘し、その後大岡氏と何回かの協議をもって、大岡氏が「レイテ戦記補遺」を発表した経緯など文学史料とも云うべき資料もあり、林先生のフィールドの広さと日本住血吸虫症の正確かつ深い考察姿勢は屹立していました。その辺の詳細は、以下のブログでお確かめください。
杉浦醫院四方山話―408 『地方病研究者・林正高先生』
杉浦醫院四方山話―416『なぜ出せない安全宣言~日本住血吸虫病はいま~』
杉浦醫院四方山話―422『大岡昇平「レイテ戦記」と補遺ー1』
杉浦醫院四方山話―423『大岡昇平「レイテ戦記」と補遺ー2』
杉浦醫院四方山話―424『大岡昇平「レイテ戦記」と補遺ー3』
杉浦醫院四方山話―427『林正高著・寄生虫との百年戦争』1
杉浦醫院四方山話―428『林正高著・寄生虫との百年戦争』2
杉浦醫院四方山話―429『林正高著・寄生虫との百年戦争』3
杉浦醫院四方山話―440 『長寿村・棡原(ゆずりはら)』
杉浦醫院四方山話―464 林正高著『日本住血吸虫症』