今日から来春にかけて、山梨県立美術館で「十一屋コレクションの名品」特別展が開催されます。当四方山話―60『十一屋酒造・野口忠蔵』でも紹介しましたが、十一屋は、野口忠蔵氏が、江戸中期に志のある同士11人と故郷・近江(滋賀県)と風土が似ていて江戸にも近く交通の便の良い甲州街道柳町宿に造り酒屋を興し、11人の志を記念して「十一屋酒造」と命名した甲府の地酒「君が代」の蔵元でした。代々の当主が文人であったことも著名ですが、幕末から明治期の当主、正忠(号柿邨)は、滋賀県議会議長も勤めた名士で、漢学者の頼山陽や画家の日根対山、富岡鉄斎ら多くの文人たちと交流した文化人で、江戸絵画の収集にも努め、十一屋コレクションを形成していったそうです。その子・正章は、国産のビール醸造を手掛けた人物としても知られた文人で、妻は、女性南画家の野口小蘋(しょうひん)です。
山梨県立美術館は、開館以来、十一屋・野口家から鉄斎や小蘋など多数の作品寄託を受け、今回、それら以外の絵画や書蹟の一括寄託を受けるにあたり「特別展」を開催することになったそうですから、十一屋・野口家のコレクションの大部分は、山梨県立美術館に収蔵されることになった記念展でもあるようです。
当館土蔵改修工事の年内終了も見えてきましたので、耐震構造も備わった建物の披露と合わせて「杉浦コレクション展―1」を来春開催いたします。杉浦純子さんから町に寄託されている杉浦コレクションを展示公開していけるよう土蔵のギャラリー化を図って、活用していく計画です。これまで当ブログで、写真で紹介してきた杉浦家の書画骨董や着物等々から風呂敷や手ぬぐい、履物などの生活品までをご覧いただけるよう図っていきます。山梨県立美術館は、開館以来、十一屋・野口家から鉄斎や小蘋など多数の作品寄託を受け、今回、それら以外の絵画や書蹟の一括寄託を受けるにあたり「特別展」を開催することになったそうですから、十一屋・野口家のコレクションの大部分は、山梨県立美術館に収蔵されることになった記念展でもあるようです。
県立美術館に一括寄託される「十一屋コレクション」もそうですが、個人コレクションが、最終的に美術館や資料館に寄託され、公開しながら永久保存されるケースは、洋の東西を問わず大きな流れとして定着しています。県内の事例では、所有権を争って四散してしまった丸畑四国堂の木喰上人微笑仏とその教訓が活かされない木喰仏の現状は、研究家・丸山太一氏が、最も胸を痛めているコトでもあります。
杉浦家が、お譲りしてきた杉浦コレクションも多く、純子さんの明晰な記憶で、行き先もほぼ県内に集中しているようです。充実した杉浦コレクション展には、期間中の里帰り展示のご協力も欠かせません。現所有者に依頼して、杉浦コレクションのより正確なリスト作成と合わせた展示公開で、十一屋と杉浦家、両コレクションを楽しめるよう努めます。