2016年1月6日水曜日

杉浦醫院四方山話―463 『山日新春文芸雑感』

 
あけましておめでとうございます。
開館以来、毎年橋戸さん手づくり干支作品で受付を飾っていただいています。

 地方新聞である山梨日日新聞の元旦号には、今年も「2016年山日新春文芸」の各部門の応募数や入賞者の紹介と入賞作品、受賞者の声が掲載されました。

甲州人の定番化した正月休みの一つに、この入選作品を読む事も入ると思う程、継続されている企画だと思いますが、「第153回芥川賞・直木賞」のように「第何回」で表示されると「山日新春文芸」の歴史もカウントでき、重みも増すように思うのですが、この企画は今年で何回目になるのでしょう・・


   まあ、「A rolling stone gathers no moss.ー転がる石には苔がつかないー 」の諺も日本人や英国人には、「仕事や 住居を転々と変える人は金も貯まらず、友人も出来ない」と、否定的に使われていますが、アメリカでは「常に活動的な人は新鮮で 、魅力的だ」と肯定的に使われていますから、多分相当長い歴史のある「山日新春文芸」も「苔むす」成熟期に入っているのでしょう。


 個人的には「A rolling stone gathers no moss」を「苔の着かないよう転がり続ける石でありたい」と思い込んできましたが、両用の解釈のあることを知ってからは、千代田葛彦の名句「巌奔り(いわばしり)水は老いざる去年今年」の方がピント来るようになりました。


 遠足で行った昇仙峡の流れを彷彿させたこの句。

透き通るような澄んだ流れがあちこちの岩にぶつかりながら、止まることなく勢いよく流れて行く・・・水も生きているなぁ~ ほとばしっているなぁ~ と、子ども心にも巌奔る水の魅力は、「若さ」の象徴だったように思います。

 また、巌奔る水は、岩も削り小石も呑み込んだりですから、矢張り「A rolling stone gathers no moss」は、ヤンキー君の解釈が正しいように思います。



 今年の「山日新春文芸」小説入選作は、閉校になって久しい吉田商業卒業生・鈴木君の「ローリングストーン」物語と同級会に集まった61歳の憧憬としての「巌奔る水」が織りなす小世界でした。

 

 今年は山梨県の地方病流行終息から20周年になります。国の登録有形文化財にも指定されている当館を単に苔むす歴史的建造物として保存していくだけでなく、巌奔る水のような企画も求められていることを肝に銘じて、当館の魅力を発信していきたいと思いますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。