「宮入慶之助記念館だより 第15号」が届きました。今回の記事の中に自治医科大学の石井明氏が「里山のミヤイリガイ」と題して、里山と種の多様性について、ビオトープでの可能性にも言及しながら、ミヤイリガイの保護、増殖について論じています。
確かに、日本住血吸虫症の撲滅のために吸虫の中間宿主となるミヤイリガイの殺貝を徹底して、この病気の終息を世界で初めて成しえた日本ですが、里から土水路と共にホタルをはじめとする多種多様な生物が消えました。
宮入教授が鈴木講師と九州・築後川で発見したミヤイリガイですが、既に築後川では全く見られなくなり、別名「片山貝」とも呼ばれた広島片山地方の河川にもいなくなって久しいことから、現在は、唯一甲府盆地一帯にしか生息していない貴重な貝となり、絶滅危惧種として、保護されるべき段階に来ているのではという提言でもあります。
これを受けて、宮入記念館館長の宮入源太郎氏は、編集後記の中で「展示室には24種の貝の標本が展示されていますが、展示の迫力を増すために生きた貝を展示したいと考えています。しかし、住血吸虫症を制圧する歴史においてこの貝は危険生物として駆除の対象とされてきました。もし、当館が貝を飼育して生きた貝を展示したらどのような事態になるか、原発事故にからむ放射能の風評被害の事例も参考に充分な分析・考察が必要であります」と慎重な見解を記しています。
ミヤイリガイそのものに毒性や感染源がある訳でなく、たまたま住血吸虫が勝手に入り込み、この貝の中で成長したという、ある意味大変な被害者でもあるミヤイリガイです。 「現在生息しているミヤイリガイの再感染の危険性は、99,9パーセント無い」と梶原徳昭氏は言いますから、日本での衛生状況からすると昭和町で、ホタル同様「ミヤイリガイ愛護会」を立ち上げ、ミヤイリガイを絶滅の危機から守る活動も検討の余地があります。幸い、昭和町内の河川等には、カワニナの生息数も増えてきていますので、石井先生の提言を活かすには、ミヤイリガイが、どの位、どんな分布で町内に生息しているのかは、調査しておく必要を感じました。
また、日本のミヤイリガイと中国の中間宿主の貝やフィリピンの貝では、それぞれ微妙に種が違い、日本でミヤイリガイが絶滅してしまうと世界から消え去る種だそうですから、長い間、殺してきた供養も含め、真剣に考えなければいけない課題であると思います。
町内の3つの小学校には、全てビオトープが完備していますので、元々この地にたくさんいたミヤイリガイが、昭和の学校のビオトープで生息しているのも理にかなっています。