2020年3月1日日曜日

杉浦醫院四方山話―608『休校・休館ー子ども・学校の誕生ー』

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、政府が全国一斉の休校を要請した結果、山梨県でも昭和町でも3日午後から学校や社会教育施設の臨時休校、臨時休館が決定しました。

よって、当館も3月3日(火)から15日(日)まで閉館し、16日(月)からの開館予定となりましたが、感染状況により更に変更も予想されますので、来館予定の方は事前に当H・Pをチェックの上お越しくださいますようお願いいたします。


 今回の政府と云うより安倍総理の政治決断による「全国一斉、休校・休館要請」報道を耳にして、真っ先に頭に浮かんだのは「アベノミクスを旗印に経済成長を売りにしてきた総理だが、本当に経済が分かっているのだろうか?」と云う素朴な疑問でした。


 それはもう30年以上前、貪るように読んだ歴史学者フィッリプ・アリエスや哲学者イヴァン・イリイチの指摘が蘇ったからでした。

二人が共通して提起した内容を極々大雑把に浅学がまとめると以下のようになります。


≪現代社会では、当たり前のようになっている子どもと大人の線引きや学校教育制度だが、その歴史は浅く、中世ヨーロッパでも子どもと云う概念や学校と云う概念は全く無く、言語を取得する7歳位になると男は徒弟修業に出され、家内制手工業の労働力となり、女は家事を担い、恋愛も飲酒も自由で大人と同じに扱われていた。それ以前の5,6歳までは、一頭の動物と同じ扱いだったので、乳幼児の死亡率は考えられない程高かった。

 18世紀から19世紀にかけてのいわゆる「産業革命」は、工場制機械工業を成立させ、蒸気機関による蒸気船や鉄道と云った「交通革命」も起こし、驚くほどの経済成長を生み資本主義経済を一気に進めた。この産業革命に付随して起こった市民革命で、それまで労働力でもあった低年齢の大人は必要がなくなり、逆に大人の労働の足かせとなり「低年齢の大人」を「子ども」として区別し「子どもが誕生」したと説いたのがアリエスです。男児の半ズボンや子供服など現代では当たり前の物も「子どもの誕生」と共に出現した。

 大人の効率的な労働時間を保証する為に、その時間、子どもを保護しておく必要からも誕生したのが公教育であり学校で、だから校舎はまとめて閉じ込めて置く必要から、刑務所と同じ構造になっているとイリイチは指摘し、学校・交通・病院が近代産業社会がもたらした象徴的存在だとして、その弊害や行き過ぎにも言及した社会評論はラジカルでした。≫


 興味のある方は「フィッリプ・アリエス」「イヴァン・イリイチ」を検索していただくとして、安倍総理の政治決断は、もう翌日「保護者休職に新助成金」を出すので「一斉休校に理解を」となりました。

本年度予算の予備費2700億円からの支出とのことですが、一斉休校は保護者の休職を余儀なくさせ、所得にマイナスが出ると云った直接的な影響どころか、近代産業社会が推し進めてきた根本制度にストップをかける訳ですから、子どもを家庭に閉じ込めて保護者がその期間手立てをとるようにと云う突然の政治決断が日本経済にどれほどのダメージとなって、それをどう修復していけるのか?と云った大問題についての議論はなかったようですから、ホント大丈夫なのか?が、浅学の素朴な疑問です。

 

 まあ、この長期間、私事がらみの難題も見事?に乗り越えて来た安倍晋三センセイですが、ウイルスには忖度などと云った気の利いた知恵はないでしょうから、ここは一番「気合いだ!気合いだ!」と気合を入れ直して、本気のかじ取りを期待するしかないのですが・・・